第13章 修学旅行の時間!
私はフラフラしながら女子大部屋へと戻った。
曲がり角を曲がり、部屋が見えてくる……そこには。
「……イリーナ先生? どうしたの?」
「……ううん、ちょっとね」
イリーナ先生が立っていた。
「……あ、そう…」
そのまま部屋に入る気分にもなれず、私はイリーナ先生の横に立った。
「………ねぇ、京香」
「ん?」
「……さっきの恋バナ、続き話してよ」
「……え……?」
イリーナ先生の思わぬ言葉に私は思考を止めた。
「莉桜とかから聞いたのよ。アンタの前の学校って…ほら、ここにはない学校なんでしょ。アイツに話すにはあいつは下世話すぎるし、カラスマは堅物だから、私になら話せると思ったの」
「……別にだいじょう…」
「いいえ京香。あなた、大丈夫じゃないわ」
そういうイリーナ先生の目は本気だった。
「……秘密ってね、語らない程重くなってくるのよ。
私は仕事柄隠すことも多かった。
……あんたは、一応普通の中学生でしょ。
だから、こっちの世界に来ても…普通でいてほしい」
「そ、そんな事……」
私は最後まで言えずに言葉に詰まった。
イリーナ先生はそんな私を見てため息をつく。
「……いい、京香。
『普通でいたい』と願う事は……大きい願いなんかじゃないわ。
アンタ達子供にとってその願いは……当たり前に守られるべきものなのよ」
『普通でいたい』ことは、大きい願いじゃ……ない……
「……じゃあ、内緒にしてくれる?」
私はイリーナ先生の顔を見ないでポツリと呟いた。
「…もちろんよ」
「……私の、帰りたくない理由……ほんとに小さいの、笑わないでね」
私はそう前置きして話し始めた。
もう、ずっと言うことはないのだろうと思っていた、私の思いを。