第13章 修学旅行の時間!
「エリートではありませんよ。
確かに彼等は名門校の生徒ですが、学校内では落ちこぼれ呼ばわりされ、クラスの名前は差別の対象になっています。
ですが。
彼等はそこで『様々な事』に実に前向きに取り組んでいます。君達のように他人を水の底に引っ張るようなマネはしません」
殺せんせーはそこで一息ついて、こちらをみた。
……あ、鈍器(しおり)の準備かな?
「学校や肩書など関係ない。
清流に棲もうがドブ川に棲もうが、前に泳げば魚は美しく育つのです」
神崎さんはその言葉に目を見開いた。
「…さて、私の生徒達よ。
彼等を手入れしてあげましょう」
顔隠しの奥からニヤリと目を細めて殺せんせーは触手を立てた。
「修学旅行の基礎知識を、体に教えてあげるのです」
高校生達はようやく気づいたようだ。
後ろから音も無く皆が近づいていることに。
そのままゴッと鈍い音がして鈍器(しおり)を頭にぶち当てる皆。
あっさりと高校生は倒れた。
殺せんせーは、私達の縄をといてくれた。
「先生、助けに来てくれてありがとう」
私は殺せんせーをふりかえって言った。
「いえいえ、先生として当然ですよ」
殺せんせーはいつもの笑顔で笑っていた。
外に出ると、もう日が傾いている。
「……あ、ここダーツとビリヤードの場所だったんだ」
「ほんとだー、バーかと思ってた!」
茅野ちゃんが日を手で遮って眩しそうに笑う。
「何かありましたか、神崎さん?」
殺せんせーが黒子の顔隠しを取りながら言った。
「え…?」
「ひどい災難に遭ったので、混乱しててもおかしくないのに。
何か逆に…迷いが吹っ切れた顔をしてます」
……うちのクラスの先生達は、自分のことにはとんと鈍いのに、生徒の変化にすぐ反応する。
神崎さんは少し目を漂わせ迷った後、その目を閉じて微笑んだ。