第13章 修学旅行の時間!
「俺等そういうあそび沢山してきたからよ、台無しの伝道師って呼んでくれよ」
そうやって高校生はニヤリと笑った。
……無理、耐えられない。
「…さいってー」
ぼそっと呟いた茅野ちゃんの言葉を、高校生は聞き逃さなかった。
一瞬能面のような無表情になったあと、茅野ちゃんの頭を後ろのソファーへ叩きつける。
「何エリート気取りで見下してンだ、あァ!? おまえもすぐに同じレベルまで堕としてやンよ」
茅野ちゃんの首をググッと絞める。
「ちょっと、首絞めるのやめてよ!!」
私は思わず声を上げた。
「……離して、早く」
「おまえもエリート気取ってんじゃねーよ!中坊のくせによォ!」
茅野ちゃんをドンッとソファーに押しやり、今度は私に攻撃をしてくる。
拳を行動範囲ギリギリで交わし、私は高校生を睨んだ。
「生意気な目してんな!!! ……………まぁいい」
高校生は何か思い出したように殴りかけた手を止めた。
「いいか、今から俺等10人ちょいを夜まで相手してもらうがな。宿舎に戻ったら涼しい顔でこう言え。
『楽しくカラオケしてただけです』ってな。
そうすりゃだ〜れも傷つかねぇ」
……分かっているんだ、こいつらは。
女の子が両親に強姦されたなんて言えない事を。
犯罪でも証拠がなければなにも出来ない事を。
きっとさっき手を止めたのも、すぐ仲間が来ることが分かってたからだろう。
「東京に戻ったらまた皆で遊ぼうぜ。楽しい旅行の記念写真でも見ながら…なァ」
茅野ちゃんの目が見開く。
それと同時に扉が開いた。
「お、来た来た。うちの撮影スタッフがご到着だぜ」
高校生…そうだ、こいつの名前確かリュウキだ。
リュウキは扉の方を見て、そのまま止まった。
ボコボコに殴られた、自分の仲間を見て。
そしてその後ろから続いてくる、私達の仲間を見て。
「修学旅行のしおり1243ページ。班員が何者かに拉致られた時の対処法」
唯一支えられていた学ランの襟を離され、あっけなく床に落ちるリュウキの仲間。