第10章 巨乳は味方か敵か
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次はなんだっけな。
私は頬杖をつきながら時間割を見ようとした、が。
ガラッ
反射的に音源を見る。
扉を開けてビッチ先生が入ってきた。
カツカツとヒールの音を響かせ、長い金髪を重たげに払うと、ビッチ先生はチョークを握った。
達筆な英語。
……読めない。
「ユア インクレディブル イン ベッド! リピート!!」
皆はポカーン。
「ホラ!!」
「…ユ、ユーアーインクレディブルイン ベッド」
驚きながらも反芻するE組。
「アメリカでとあるVIPを暗殺したとき、まずそいつのボディーガードに色仕掛けで接近したわ。その時彼が私に言った言葉よ。
意味は『ベッドでの君はスゴイよ…♡』」
おい、私達は中学生だぞ!!
分かってても恥ずかしいわ!!
「外国語を短い時間で習得するには、その国の恋人を作るのが手っ取り早いとよく言われるわ。
相手の気持ちをよく知りたいから、必死で言葉を理解しようとするのよね。
私は仕事上必要な時…そのヤリ方で新たな言語を身につけてきた。
だから私の授業では…外人の口説き方を教えてあげる」
…相手の気持ちをよく知りたいから、言葉を理解しようとする……。
「プロの暗殺者直伝の仲良くなる会話のコツ。身につければ実際に外人と会った時に必ず役立つわ」
それは社会術だ。
「受験に必要な勉強なんてあのタコに教わりなさい。私が教えられるのはあくまで実践的な会話術だけ」
ビッチ先生はどこか気まずそうに目をそらした。
「もし…それでもあんた達が私を先生と思えなかったら、その時は暗殺を諦めて出ていくわ」