第8章 毒は不器用。
……約二時間後。
「っああああああ!! 出来た! 出来ました先生!! やったー!!!」
時たま休憩(という名のジャンプの訓練)をはさみつつやった腕力をあげる訓練。ようやく木の上にたどり着いた。
「いいだろう、降りてこい!」
「はーい!」
私は視線を上にあげた。
「……あれ」
校舎が斜め下にある。その窓際にいるのは…殺せんせーと愛美ちゃんだ。そういえば実験するって言ってたな。すっかり忘れてた。
確か……7話、毒の時間。
これが終わると……あっという間に五月だ。
「どうした? 降りてこい!」
「あっ、はい! すみませーん!」
烏間先生に再度呼ばれ、今度こそ私は視線を下へ向け、ロープを伝って降りた。
「今日の訓練はこれで終わりだ」
「はい、ありがとうございました」
「……皆が君ほど熱心だといいんだがな。」
烏間先生は少し残念そうに呟いた。
「そんな…」
それに、と私は言葉を繋げた。
「私は帰らなきゃならないし……」
「その件なんだが」
「えっ」
烏間先生から帰る件の話が出たのは初めてだ。
「防衛省の上の方のパイプに…パラレルワールドや異世界について研究してる奴がいるそうだ。俺も噂でしかきいたことがないが……」
「そうなんですか!?」
「君の世界とはパラレルワールドなどの事情が違うかも知れないが、俺も全力を尽くそう」
「は、はいっ! ありがとうございますっ!!」
やっと……やっと手がかりが見つかった!
「烏間先生、重ね重ねありがとうございます!」
「いや大丈夫だが……」
烏間先生は目を泳がせた。
「……? 何か言いたい事でもありますか?」
「……よく分かったな」
「目が泳いでいたので」
烏間先生は顔をしかめて、
「俺もダメになったもんだな」
と言った。
「言いたい事って……何ですか?」
私は烏間先生の目を見つめた。