第8章 毒は不器用。
「東尾さん。君は足のバネとその場の応用力はある。君に足りないのは腕力だ。だから、手だけでロープを登る訓練をしよう」
「はいっ! お願いします!」
私は軽く会釈をしてロープを見上げた。
「……で、いきなり10m登れと…」
「当然だ。これを登れるまで帰れないぞ」
私と烏間先生が眺めているのは校庭の木にかけられたロープだ。
「いやいやいやいや!! 絶対途中で力尽きちゃいますって!」
「そうだ。だから途中で足のみのジャンプの訓練も入れる。そしたら力尽きないだろう」
「ええええええええ!?」
烏間先生の真顔に、これは本気だと悟る。
「……頑張りまーす」
若干げんなりしつつ、気合をいれて私はロープに軽く足をかけた。