第7章 赤髪の彼の手入れは長い。
殺せんせーの触手が目にも止まらぬ早さで崖の下へと吸い込まれる。
下の方を見ると、殺せんせーは確かにカルマ君を受け止めている。
「……よ、かっ、た…」
私はペタンと座り込んだ。
「……やっぱり、殺せんせーはすごいや」
渚君がそう呟いた気がして…私は渚君の目をただずっと見つめていた。
殺せんせーが飛んでくる。カルマ君をかかえながら。
「…カルマ君、平然と無茶したね」
「別にぃ…今のが考えてた限りじゃ一番殺せると思ったんだけど。しばらくは大人しくして計画の練り直しかな」
カルマ君は少し気に入らないかのように言った。
「おやぁ? もうネタ切れですか?」
そこへかかる声。
「報復用の手入れ道具はまだ沢山ありますよ?君も案外チョロいですねぇ」
……うん、この言い方は殺意が湧くだろう。
でも、カルマ君は1度押し黙ってから爽やかに言った。
「殺すよ、明日にでも」
カルマ君の様子に殺せんせーは笑顔の上に丸を描いた。どうやら下でカルマ君は殺せんせーに諭されたらしい。今までの濁った目から清々しい目になった。
「帰ろうぜ渚君。帰りメシ食ってこーよ」
カルマ君は笑顔でいう。手に持っている財布の柄は、カルマ君には少し似合わない。
「ちょッ、それ先生の財布!?」
「だからぁ、教員室に無防備で置いとくなって」
カルマ君と殺せんせーが言い合う。それを後ろから眺めていると、渚君がゆっくり近づいてきた。
「……渚君」
「東尾さん」
「あの、来た上で何も役に立たなくて…ごめんね」
「ううん。今まであんま見れなかった東尾さんが見れて面白かったよ」
渚君は可愛く笑った。
「……ん? 今まで見れなかった?」
「いやほら、結構大人しいイメージだから、あんな叫ぶの全然見ないじゃん」
「忘れよう渚君。……ってあぁ!! 私烏間先生待たせてんだ!」
渚君と話していてすっかり忘れてた!!
「じゃあねっ渚君! また明日!! あ、あとカルマ君に宜しく言っといて!! それじゃ!!!」
私はダッシュで校舎へ走った。