第7章 赤髪の彼の手入れは長い。
校舎の裏の裏の裏。
崖の方。
「……なんで東尾さんいんの?」
椚ヶ丘の街を見ながら、こちらを見ずにカルマ君は言った。少しでも足をズラしたら今にも落ちそうだ。
「……僕が連れてきたんだ。東尾さん転校生だから…ここを案内しようと思って」
……これで会話とかマンガと変わっちゃったらすっごい罪悪感。私は青白い顔で愛想笑いを浮かべた。
「…カルマ君、焦らないで皆と一緒に殺ってこうよ」
あ……。セリフ戻った、良かった……。心の底からほっとする。
「殺せんせーに個人マークされちゃったら…どんな手を使っても1人じゃ殺せない。普通の先生とは違うんだから」
そうだね、マッハで動く人型じゃない触手生物を普通の先生とは……言えないかな。
その言葉を聞いて少し考え込んだカルマ君は、そのあとニヤリと笑った。
「……やだね。俺が殺りたいんだ。変なトコで死なれんのが一番ムカつく」
「………」
少し困ったように下を向く渚君。
するとそこへ。
「さてカルマ君。今日は沢山先生に手入れをされましたね」
「……殺せんせー!」
私は思わず言葉を零した。
「まだまだ殺しに来てもいいですよ? もっとピカピカに磨いてあげます」
殺せんせーはキシシ、と横縞を顔に浮かべて笑った。
ざわ、と風がなびく。渚君がどこか不安げにカルマ君を見た。
……何かの、波長を読み取っているのだろうか。
「……確認したいんだけど、殺せんせーって先生だよね?」
……そうだ、この後…。
「? はい」
「先生ってさ、命をかけて生徒を守ってくれるひと?」
「もちろん、先生ですから」
……私はこの先が分かる。それでも身の毛がよだつ。
「…そっか、良かった。なら殺せるよ」
カルマ君は軽い音を出して銃を向けた。
「確実に」
足を投げ出して、カルマ君は笑顔で崖の下へ落ちていった。
「っ!!?」
渚君は相当驚いた顔をしている。
……やっぱり…
口を出さずにはいられない!!!!
「死ぬなっ、カルマああああああああああああ!!!」
私は目をつぶって叫んだ。
「えぇ、死なせませんよ」
耳元で、囁かれた気がした。