第7章 赤髪の彼の手入れは長い。
4時間目の技術家庭科。
「不破さんの班は出来ましたか?」
「…うーん、どうだろ。なんか味がトゲトゲしてんだよね」
不破さんはベロをベーっと出して言った。
「どれどれ」
殺せんせーも近付くが、それとほぼ同じタイミングでカルマ君も近付く。
「へえ、じゃあ作り直したら? 一回捨ててさ」
すぐにドンッという音がして不破さんの班の鍋が落ちる。
「わっ!」
カルマ君がスープの合間を切って殺せんせーに切りかかる。
……だけどやっぱり失敗。
「エプロンを忘れてますよカルマ君」
カルマ君は可愛い(中学生女子でも少し派手かなと思うレベルの)エプロンとバンダナをつけていた。
「スープならご心配なく。全部空中でスポイトで吸っておきました。ついでに砂糖も加えてね」
「あ!! マイルドになってる!!」
美味しそうに喜ぶ不破さんの横でカルマ君は恥ずかしそうに、そして苛立たしげにバンダナを外した。
「……ねぇ京香」
「ん?」
私は茅野ちゃんと愛美ちゃんと同じ班だった。
「あれ、どう? やっぱ無理?」
「……茅野ちゃん、あれ見りゃ分かるっしょ」
「…そうだね」
エプロン姿のカルマ君を見て笑う茅野ちゃん。
「確かに…ずーっと警戒してる…っていうか、手入れ、してますよね、殺せんせー」
愛美ちゃんも微笑みながらいう。
「……あれ、渚。どう? 美味しくできた?」
ふと気付くと渚君が近くにいた。
「いや、美味しいけど…今の話聴こえたから」
「ああ、そうだったの」
「えーと、東尾さん。あれ…やっぱ無理だよね」
渚君はこちらを見て言った。
「……うん、あれは……きついよ」
私は苦笑いで渚君を見つめた。