第3章 One Love
大野さんを医務室に連れて行こうとすると、大野さんが何度も首を横に振る。
「…や……だ、こ、こに、いる…」
更に体の震えが酷くなる。
「わかった
わかったから、落ち着いて」
大野さんの背中を擦りながら声を掛ける。
「っ‼」
翔さんの体がピクリと動いた。
「翔くんっ⁉」
潤くんが声を掛けるとゆっくり瞼を開いた。
みんなが安堵の息を吐く。
「翔くん、わかる?」
「ん、あぁ…」
「今救急車呼んだからこのまま動かないで」
「大丈夫だ、よ」
「念のため病院で視て貰って
頭打ってたら大変だから」
大野さんが俺の腕を払い翔さんに近づく。
「…しょ、くん」
「ごめん、心配掛けちゃったね…
そんなに泣かないでよ…」
翔さんは手を伸ばし大野さんの涙を拭いた。
途端に涙が溢れだし大野さんが翔さんの胸に顔を埋め大声で泣き出した。
「しょおくんっ!しょおくんっ!」
「カズ、リーダー押さえてて翔くんに良くないから」
俺が大野さんの肩を抱き、体を起こそうとしたら翔さんが
「ニノ、大丈夫だから」
と言って俺を制し大野さんの頭を優しく撫でた。
その眼差しは俺が時折見たあの切なさと優しさの混ざった、大野さんだけに向けられて来たものだった。