第16章 リフレイン
そうだよね…この一連の智くんの行動は今までの智くんじゃなかった。
元々飲みに誘われるのがあまり好きじゃないのにアニキ会に参加して、恋人のふりを自分から申し出るなんて、今までだったら頼んだって絶対やらない。
何よりも酔ってもいないのに、俺を抱こうとした時点で気付くべきなんだよな…智くんの『想い』に。
ただの性欲解消や、興味本位ならとっくの昔にそうなっていてもおかしくない。それこそ酔った勢いでいくらでもチャンスはあったんだ。ライブツアー中とか…
でも、今まではそれらしき雰囲気になることさえなかった。
それが突然今日になって『我慢の限界』を迎えたのは智くんの中に俺に対する特別な想いが芽生えたから…
いつからだろう…智くんに些細な変化があったのに、俺は『そんなことはありえないんだ』って否定して、その度に心に鍵をかけ直してた。
でも松潤は智くんの気持ちに気付いた。
俺の気持ちを昔から知ってたから、俺と智くんのことを気に掛けていてくれたんだ。だから今頃になって過去の話をしたり、『チャンスを逃すな』ってアドバイスしてくれたんだね。
お前が過去の話までして助言してくれたんだ。このチャンス、無駄にしないよ。
俺はひとつ大きく深呼吸をした。
「…智くん…好き、だよ…」
そう告白すると、智くんはゆっくりと俺から離れ、ふにゃっと、今にも泣き出しそうなほど顔を歪め、笑顔を浮かべた。
「…うん…俺も…翔ちゃんのこと、好き…」
再びギュッと痛いくらいに強く抱きしめてくれたから、俺も智くんの背中に腕を回し、そっと抱きしめ返した。