第16章 リフレイン
タクシーの中で、智くんは言葉を発せず、余程具合が悪いのかと心配になる。
智くんのマンションに着いて、ひとりにするのが心配で部屋までついていった。
智くんが玄関の鍵を開け、中に入るのを確認したら帰ろうと智くんの後ろに立っていたのに…ドアを開けた智くんは俺の腕を掴かみ、玄関の中へ引き入れた。
「えっ⁉」
勢いよく引かれたせいで、俺の体は智くんの胸の中。
「あっ!ごめっ…」
具合の悪い智くんに体当りするようなマ、ネ……っ⁉
慌てて体を起こそうとしたのに、智くんの腕がそれを阻止した。
「智くんっ⁉」
キツく抱きしめられ離れることが出来ない。
「ごめん…翔ちゃん…俺、我慢できなくなっちゃった…」
「え、なにが?」
「…嫌なら突き飛ばして…」
そう言った智くんの手がシャツの裾から忍び込み、俺の素肌に触れる。その手がさっきと同じように優しくて、ゾクゾクと快感が背中を駆け上がる…
「あっ、ん…」
ビクッと震え、声が出た。
背中を這いずり回る智くんの手…
「突き飛ばさないの?俺からは止めてあげないよ?」
耳元で熱を含む声で囁かれた。
突き飛ばせるわけない…好きな人に触れてもらえてるんだから…これが松潤のいう『チャンス』なのかはわからない。でも、こんな機会おそらく二度とない…酔った勢いだとしても、俺からは振り払えないよ…
智くんの手が背中から前に移動してきた。その指先が胸の突起物に触れる。
「あぁっ…」
智くんにされるがままになってる俺…智くんの手が俺から離れた…
『カチャッ』
静かな空間に玄関の鍵がかかる音が響いた。
俺の手を握り、智くんは部屋の奥へと進んでいく。