第16章 リフレイン
どれくらいの時間経ったのかな…もう結構飲んでるよな。
「ちょっと、トイレ行ってくるね」
「ん、いってらっしゃい」
智くんに声を掛けてトイレに向かった。用を済ませトイレのドアを開けると、すぐ前に上田が立っていた。
「あれ?お前もトイレ?」
「あ…いえ…」
視線を逸らし言い淀む上田。
「どうした?何かあった?」
そう聞くと上田は意を決したように顔を上げ、俺の事を見つめた。
「あの…勘違いだったらスミマセン。アニキと大野さんって、付き合ってるんっすか?」
「え⁉」
まさかこんな早い段階でストレートに聞かれると思ってなかった。さっきまでのやり取りでそう見えたってこと?
どうしよう…なんて答える?答えを用意してなかった。う~ん、恋人だけど、秘めた仲だって設定だし…
「何してんの?そんなとこで」
どう答えようか迷ってると、いつもより低い智くんの声が響いた。
慌てたように上田が振り返り、俺も声のした方を見ると、明らかに不機嫌そうな智くんが上田を睨むように立っていた。
「あ…」
上田が一言だけ発し固まる。
智くんがスタスタと俺の正面まで歩いてくると、俺の頬に触れた。
「ふたりして帰ってこないから心配しちゃったよ」
「ごめん…」
「ううん、翔ちゃんが無事ならいいんだ。結構飲んだから、具合悪くなっちゃったのかと思った」
「大丈夫…そこまでは飲んでないよ」
「そう?でもさ、そろそろお開きにしない?」
そう言った智くんの手が、俺の頬から首筋に向かって撫で下りていった。
「んっ…」
その手の動きがゾクッとするほど優しくて、思わず声が漏れた。