第16章 リフレイン
「すみませんっ!遅くなりました!」
個室の扉が開き、風磨が慌てた様子で現れた。
「お疲れ、そんな慌てなくても、俺も今着いたばかりだから大丈夫だよ」
「そうっすか、ならよかった」
ホッと息を吐いた風磨に対し、上田が睨みを利かせる。
「全然良くねぇよ、遅れるなら連絡ぐらい入れるのが筋だろ」
「あ、はい、すみません…」
「上田、まだ遅れたって程の時間じゃ無いだろ?そんなこと言ったら、俺たちだって遅れたことになる」
「翔くんはいいんです。俺たちの為に時間作ってくれてるんですから」
ほんと、こういうとこ真面目なんだよなぁ。でもさ、仕事上多少遅れるのは仕方の無いことだし、遅れたって言ったって10分も遅れてる訳じゃないし…
「風磨、いいから取りあえず座れよ」
「はい、親分…」
智くんがフニャッとした笑顔を向けると風磨は増田の隣に座った。
「腹へった、早く注文入れようぜ」
智くんがメニューを開きそう言うと、その場の空気が少し緩んだ。
「あ、これ頼もうよ。翔ちゃん、好きそう」
「え?どれどれ?」
「ん、これ…」
智くんが肩を寄せ、メニューを見せてくれる。
「ほんとだ、旨そう」
「だろ?絶対翔ちゃん好きだと思ったんだよね」
「じゃあ、これも頼もうか。智くん好きでしょ?」
「うん、好き」
「あとは~…」
「あっ、生しらすがある」
「ほんとだ、前に智くんが食べてるの美味しそうだったよね」
「あれ、マジで旨かった。翔ちゃんに食べさせてやりたいからさ、今度行こうよ」
「ほんとに?」
「ほんとに」
「んじゃ、楽しみにしてるね」
智くんが本気で言ってるとは思わないけど、誘って貰えるのは嬉しい。