第16章 リフレイン
〈翔サイド〉
智くんとタクシーで店に向かった。
「ねぇ、智くん。何か手を考えてたりするの?」
じゃなきゃ、わざわざ智くんが参加する意味がないし。
「んふっ、まぁ、ちょっとね。俺に任せておいてよ」
フニャッとした笑顔を見せ、余裕すら感じるんだけど、智くんが何をしようとしているのかわからない俺は、若干不安が残る。
上田がどこまで俺との事を考えてるかもわからないし…もしかすると、取り越し苦労で終わるかもしれない。それならそれが一番いいんだけどね。
でも、本当に上田が告白なんかしてきたら…折角なついてくれたアイツをフるようなマネはしたくないし。智くんが言うように、上田が本格的に動く前に諦めさせる事が出来るなら、それがベストなんだとは思う。
「翔ちゃん、大丈夫だからね?心配しなくていいよ?」
俺の気持ちを察したのか、智くんがシートに置いてあった俺の手をその上からぎゅっと握りしめてくれた。
「うん…」
智くんの手が温かくて、握りしめられた事が嬉しくて、俺は智くんに向かって笑顔で頷いた。
「でさ、タクシーから降りたら俺たち恋人同士だから。よろしくね?」
「へっ?」
突然何を言い出すんだ、この人は?
「だぁかぁらぁ、翔ちゃんと俺は付き合ってるっての!」
「はっ?何それ?」
「名付けて『翔ちゃんは俺のモノだから、お前ら手を出すんじゃねぇぞ作戦』」
ニコニコと笑う智くん。ノリが相葉くんみたいなんだけど、本気でそんな作戦成功すると思ってるの?