第16章 リフレイン
それからというもの上田からの誘いが増えた。何度かサシ飲みもしたし…
『アニキ、次はいつ予定空いてますか?』
「はぁ~」
楽屋に着いてスマホの画面を開き思わず溜め息が出た。
確かに俺から言ったよ?もっと仲を深めたいって…でもさ、さすがに飲みに行ってすぐに次誘ってくるってちょっと多くね?風磨とだってそんなに会ったりしてない。
上田は先輩への配慮が出来る奴だと思ってたのに、この前の一言でこんなことになろうとは…
「翔ちゃん?」
「え…あ、智くん。おはよ」
突然名前を呼ばれ顔を上げると目の前に智くんが立っていた。今日は智くんとふたりで取材の仕事。
「おはよ。何かあったの?俺が入ってきたの気が付いてなかったでしょ?」
「ん…何かあったって程じゃないんだけどさ…」
「そう?結構深刻そうな顔してたよ?俺でよければ話聞くけど」
智くんが俺の隣のスペースに座った。
「ほんと大したことじゃないんだ…たださ、最近後輩からの誘いが増えてどう対処していいのか考えてた」
「迷惑なら断ればいいじゃん」
「そう簡単にはいかないよ。俺から『仲を深めたい』って言っちゃったし」
「えっ⁉そんなこと言ったの?」
智くんに少し驚いた言い方をされた。
「う、ん…まさかこんなに誘われることになるなんて思わなくてさ」
「相手は?誰?」
「…上田」
「はぁ~、よりによって上田かよ…」
「なに?よりによってって」