第13章 pray
返事が出来ずに智くんの瞳をじっと見つめていたら、ふっ、と頬の筋肉を緩めた智くんがゆっくりと近付いてきた…
何をするんだろうとそのまま智くんから視線を逸らさずにいると唇に温かいモノが触れた…チュッと軽く吸われはじめて智くんにキスをされたことに気が付いた。
突然のことに吃驚して、ゆっくりと離れて行く智くんの顔を見つめ続けた…再び真剣な表情をした智くん。
「…どう?」
「…へっ?」
「今…どんな気持ち?」
今?今って…
「ドキドキしてる…」
「他には?」
他なんてわからないよ…智くんにキスをされたと認識してから全身が心臓になったのかと思うくらいドキドキしてるんだから…他には何も感じない…首を横に振った。
「嫌な感じしない?」
嫌な感じなんて全くしない…今度は首を縦に振る。
「俺のこと気持ち悪いとか…」
智くんのこと気持ち悪いなんてあるわけない!強めに首を横に振ると智くんの手が伸びてきて俺の頬に触れた。
「なら、もう一度試してみていい?」
もう一度?もう一度試したらわかるのかな…智くんに触れられてる左頬だけがやたらと熱く感じる理由を…
コクリと首を縦に振ると智くんは嬉しそうに微笑んでゆっくりと近付いてきた。
再び触れた智くんの唇は俺の唇を優しく包み込むように何度も啄んだ…
「んっ、」
薄く開いた唇の隙間から智くんの舌がするりと入り込むと俺の舌に絡み付いてくる…俺はそれを待ち望んでたかのように受け入れた。
「ふっ、ん…ん、ぁ…」
繰り返し続けられるくちづけは甘くて身体が蕩けるよう…気がつけば智くんの腕に包まれていた。