第13章 pray
本当に本当なんだ…智くんが俺のことを好き…胸の奥がまたムズムズする。
「翔くん…ごめんな、余計なこと考えさせて…困るよな、こんなこと言われても」
再び黙り込んだ俺に謝る智くん。
「あの、謝らないで大丈夫だから…別に困ってないし…」
「ほんとに?嫌だとか思わない?こんな近くに自分のことを好きな男が居るって」
「思わないよ、全然思わない…むしろちょっとほっとしたかも…」
「ほっとした?なんで?」
智くんが不思議そうに俺の顔を見た。
「あのね、俺智くんが好きなのって松潤だと思ったの」
「は?なんで松潤?そんな訳ないじゃん」
「ライブの最終日ふたりが話してるの聞いて勘違いしちゃったんだよ…松潤が嬉しそうに『大好き』なんて言うから」
「え?大好き?…あ~、舞台の話してる時か」
智くんが納得したように頷いた。
「みたいだね、後から松潤の話聞いてて勘違いだってわかったんだけど…でもさ、その誤解が解けるまで俺ちょっと苦しかったんだよね…理由はわからないけど」
「もしかしてさ、ライブ会場で翔くんの様子がおかしかったのってそれが原因?」
探るような目で俺を見る。
「う、ん…そう…あの時、何も考えられなくて気が付いたら時間だけが流れてた…智くんの声聞いたら苦しくなって…」
「それで泣いたの?」
首を縦に振り頷いた。
「それってさ、俺のこと好きってこと?」
そう智くんに言われて驚いた…俺が智くんを好き?そんなこと…
「…わからないよ…そんな風に考えたことなかった」
「でも苦しかったんでしょ?で、俺が好きなのが翔くんってわかってホッとしたんでしょ?」
そう言われるとそうなのかな…少し俯いてしまった俺に少し緊張した智くんの声が聞こえた。
「試してみる?」
試す?何を?