第13章 pray
「ありがとうございました」
「お疲れさまでした」
撮影が終わり挨拶を言ってスタジオを後にした。メイクを落とし着替え終わった頃スタッフさんがケーキの箱を持って現れた。
「大野さん、こちらどうぞお持ち帰りください」
「ありがとうございます」
嬉しそうに受けとる智くん。
「さ、帰ろうか翔くん」
「うん」
智くんの家に2度目の訪問…今日は前回とは違う理由で緊張するな…智くんは何を話そうとしてるんだろう。
「どうぞ上がって?」
前回と同じように案内され智くんのあとについてリビングに入る。
「用意するからちょっと待ってて」
「手伝うよ」
キッチンへ向かおうとする智くんの後について行こうとしたら智くんが立ち止まり振り返った。
「今日はいいよ、すぐ用意できるから」
「でも…」
「いいから待ってて、午前中の内に下準備しておいたんだ…だから大丈夫、テレビでも観てて」
「うん…」
仕方なくソファーに座りテレビをつけた。智くんが何を話そうとしているのかわからずにソワソワしてるからテレビをつけてても内容なんてちっとも入ってこない。
「お待たせ」
智くんがテーブルの上に日本酒と刺身の盛り合わせを置く。
「わっ!刺身旨そぉ…貝もあるじゃん」
「うん…ちょっと待ってて、あと鍋持ってくるから」
「鍋?いいねぇ…この時期は鍋が最高だよ」
「だろ?翔くんならそう言うと思った」
智くんは嬉しそうにキッチンへ戻ると鍋を手にして帰ってきた。
卓上コンロの上に鍋を置き火を着けると蓋を開けた。
「海鮮鍋?」
「そ、カキとホタテも入ってるよ」
「ホタテ?俺の好きな物ばかりじゃん」
「そりゃそうでしょ、翔くんの誕生日なんだから」