第13章 pray
エプロンを付けられると早速生クリーム相手に悪戦苦闘する俺…
「やっぱムズイよデコレーション…」
ぼやきながら作業を続けていく。そんな様子も撮影されながら智くんの方を見ると手を止め真剣な表情で考え込んでる。
「智くん、どうしたの?」
「ん~、仕上げどうしようかと思って」
「もう仕上げ?俺全然終わらないよ」
「翔くん料理苦手だもんなぁ…いいんじゃない?クリームさえ塗ってあれば」
「え~、そんなのあげたら相手に嫌われちゃうよぉ」
「そっかなぁ、翔くんから貰えるなら俺は何でも嬉しいけど」
ニコッと笑う智くんにまたドキッとした。
「さ、智くんにあげる訳じゃないでしょ?相手役やって貰うだけなんだから」
「あ、そっか…残念」
その言葉にまたドキッとする。なんなんだよ、今日の俺。
出来上がったケーキを箱に入れリボンを結んだ。智くんのケーキには青色のリボン、俺のケーキには赤のリボン。
エプロンを外し箱を持つ…まずは俺から智くんに渡しその様子を撮影し、次に智くんから俺に箱が手渡された。
お互いの箱をテーブルの上に並べ1つずつ開く。智くんが開くとお世辞にも綺麗とは言えないケーキが現れた。ケーキの上にはチョコで作られたプレートにチョコペンで書かれたきったない文字…
『これからよろしくお願いします❤』
「ははっ!翔くんらしいなぁ」
「ごめんね、下手くそで…」
「いや、いいよ…真面目な翔くんらしい」
「どこが?」
「そんな小さい場所に文章書いて返事しちゃうとこ、別に返事を書けとは言ってないじゃん」
「あ、そっか…だからぐじゃぐじゃになっちゃったのか」
「そうだよ、そんな狭いスペースにひらがなで書くんだもん」
「ごめんね…変なもの渡しちゃって」
「ううん、言ったでしょ?翔くんから貰えるならどんなんでも嬉しいよ」
智くんはほんとに嬉しそうに笑ったんだ…