第13章 pray
「翔くん?具合悪い?」
気が付いたら目の前に心配そうな智くんの顔。
「え、悪くないよ?なんで?」
「いつもより顔が赤い気がする」
「そんなことないでしょ」
「そうかなぁ…ちょっとごめん…」
智くんの右手が伸びてきて俺の額に触れた。
「ん~ほんとだ、熱くはないね…気のせいか」
「そ、そうだよ…」
智くんが触れた額が熱い…しかもまたドキドキしてるし…どうしちゃったんだろ、俺。
「おはようございます、大野さん、櫻井さん…撮影の準備お願いできますか?」
「はい…翔くん、大丈夫ならメイクしに行こうか」
「う、ん…」
モヤモヤを残したままメイクルームに向かった。
着替えを済ませ撮影スタジオに入るとスタッフさんが近づいて来て今日の撮影の内容を説明してくれた。
「今日はちょっと早いですけどホワイトデー企画です。バレンタインに女性からチョコを貰ってそのお返しをする、的な」
「どうやるの?」
智くんが質問するとスタッフが用意されてるテーブルを指差した。
「あそこにケーキのスポンジを用意してあるのでデコレーションしてください…まだ付き合う前の女性にオッケーの返事をするというコンセプトでお願いします」
「わかりました」
とは言ったけどさ、俺の苦手とする分野じゃん。智くんはこういうの得意なんだよなぁ。
「で、もちろん相手の女性は用意してないのでお互い相手役やってください」
「ふたりで渡しっこするの?」
「はい、お願いします」
「了か~い」
楽しそうに微笑む智くん…珍しく乗り気だな。