第13章 pray
「智くんの言う通りだわ…今の俺には彼女出来ないね、残念だけど」
「そっか…」
智くんがホッとしたような、でも少し残念そうな顔をした。
「今翔くんの心の中には誰もいないって事だよね?今まで出会った人は翔くんの恋人にはなれないってこと?」
「ん~、違うかな」
「違う?」
「だって今まで出会った人の中にも魅力的な人たちは沢山いるでしょ?だからさ、それこそその人たちの中からもっと理解したら好きになる人が出てくるんじゃないかな?ちょっとしたキッカケで好きになる可能性はいくらでもある気はする」
「魅力的な人かぁ、例えばどんな人?」
「パッとは出てこないけど嵐のメンバーだってみんな魅力的じゃん、彼女候補は無理だけど恋人候補?…なんちって」
冗談で言ったのに智くんは真面目な顔でウンウンと頷いてる。
「なるほど…可能性はゼロじゃないってことか…」
可能性?何の可能性なんだろう…智くんが何を考えてるのかわからないや。
智くんとの珍しい恋愛トークをしているうちにライブの疲れもあってかいつの間にか眠ってしまったらしい。
気がつけばソファーから下りラグの上で智くんと一緒に毛布にくるまってた。洗濯して貰っておいてよかったな…今日はこのまま泊めて貰っちゃお…毛布を深く被り直すと
「んっ…」
動いたから起こしちゃったかな?続いて聞こえたのは智くんの寝息…よかった起きてない。
「え?」
なぜかふいに智くんの腕が伸びてきて抱きしめられた。起きてないんだよね?どうしよう…温かいし、智くんの優しい香り好きだからこのままでもいいか…
そんな事を思いながら再び眠りに就こうとしたとき
「俺のモノになってよ…」
寝言?きっと好きな人の夢を見てるんだろうな。智くんの顔を見ると苦しげで…その表情と切なすぎる智くんの声に胸が苦しくなって暫く眠りに就けなかった。
智くんが好きな人と幸せになれますように…
智くんをそっと抱きしめ、眠りに落ちるまでずっとそう祈り続けた。