第13章 pray
「好きな人?俺の?いないよぉ、居たら今日だってその人誘うでしょ」
「そっか…翔くんは彼女とか欲しいと思わないの?」
智くんは真面目な顔をしたまま質問を続けてくる。
「ん~、考えなくもないけど、だからといって今自分から動くことはないかな…好きな人が出来れば自然とそういう行動に出るんじゃない?」
「じゃあさ、誰かからコクられたらどうする?」
まだ表情を崩さない智くん。
どうしたんだ?恋バナでこんな真剣になるなんて。
「そりゃ相手によるよね…全く知らない人とは付き合えないよ、俺一目惚れはないと思ってるから…よく理解して好きになってからじゃないと」
そう答えたら智くんはちょっと目を見開いてふにゃっと表情を崩した。
「ははっ、やっぱ翔くんだわ」
「え?そう?」
『うんうん』と首を縦に振る智くん。
「恋愛においてもマジメ…『理解して好きになってからじゃないと駄目』なんてさ、取りあえず付き合って合わなかったら別れようとかは思わないんだね」
「そんなこと出来ないよ、相手に失礼じゃん…『やっぱり好きじゃないです』なんてさ」
「でも、今の話でいくと翔くんいつまで経っても恋人出来ないよ?」
「そうかなぁ…」
「だって今は自分から動かないんでしょ?で、相手から来ても自分が相手のこと好きじゃないと付き合えないってことなんでしょ?」
「まぁ、そう言うことだよね」
「でもさ、今好きな人いないってことは告白してくれた人がいてもその人のこと好きじゃないんでしょ?」
「うん、そうだね」
「好きじゃないならすぐには付き合えないよね?まずはお友だちからって始めるの?翔くんにそれが出来る?」
確かになぁ、まずはお友だちからは難しいかも…彼女でもない人と会う時間作るとか無理そうだし。興味があれば別だけど今の俺にはそんな人いない。