第12章 抱擁
「智くん、踊るんでしょ?俺少し休むから見てていい?」
「いいけど、まだ全然出来てないよ?」
「いいよ、智くんの踊りが見たいだけだから」
「俺の踊り?」
「そう、智くんの踊り…格好いいよね?」
「格好いいって…そんな大した踊りしてないから」
「ううん!凄いって!羽が生えてるのかと思っちゃうもん」
「は、羽⁉」
そんな風に見て貰えてることは嬉しいけど恥ずかしい。
「なんか、あんまり誉められると踊り辛くなるんだけど…」
「あ、ごめん…邪魔しちゃったね、大人しくしてるから始めて?」
ニコッと笑って翔くんは壁に寄り掛かるように座った。
考えていた踊りを実際に音に合わせて踊り始めた…修正を入れながら何度か踊り何となく形が決まった。
「出来たの?」
座ってた翔くんが立ち上がって俺のところに寄ってきた。
「うん、どう?」
「格好いい…ちょっと難しそうだけどなんとかなるかな」
「大丈夫だよ…みんないつもちゃんと踊ってくれてるじゃん…俺感心してんだよ?みんな俺の訳のわからない説明で踊ってくれるんだから」
「ははっ、確かに…みんな凄い理解力だよね?」
「うん、俺の頭の中覗かれてるのかと思っちゃうくらい」
「智くんの頭の中かぁ…覗けたらいいのに…」
「え?」
「あ、ううん…なんでもない」
小さく横に首を振る翔くんの瞳が少し悲しそうに見えた。