第12章 抱擁
「翔くん、まだ踊るんでしょ?俺のこと気にしなくていいから好きに練習して?」
翔くんのことだから俺の集中切らさないように静かにしててくれたんでしょ?翔くんってほんとに気遣い屋さんなんだから…それじゃ翔くんが早く来た意味なくなっちゃうじゃん。
「うん、じゃあやらせて貰おうかな…あ、ねぇ迷惑じゃなければ今の踊り少し教えてくれない?難しそうだからみんなの足引っ張らないように先に少し覚えたい」
「迷惑じゃないよ…でも大丈夫?覚えたい踊り合ったんじゃないの?」
「他のは映像見ながら出来るけど、これは智くんの頭の中にしかないでしょ?だったらマンツーマンで智くんに教えて貰った方がいいかなって」
「あ~、なるほど…じゃあ始めようか、あまり時間ないし」
「うん…よろしくお願いします、先生」
「先生は止めて…」
「ははっ、じゃあよろしく、智くん」
「了解です」
音楽なしでゆっくりと翔くんに教えていった。
「じゃあ、今度は音楽ありでいくよ?だいぶスピードアップするけど頑張ってね」
「うん」
音楽をかけて踊ってみるとなんとか踊りきった。
「凄いよ翔くん、ちゃんと踊れてるじゃん」
「ありがと、智くんの教え方が良かったからだよ」
嬉しそうに微笑む翔くん。
「いやいや翔くんの理解力が凄いんだって」
「ううん、凄いのは智くんだよ」
「翔くんだって」
お互いに言い合ってたらなんだか可笑しくなった。
「「ぷっ!はははっ!」」
ふたり顔を合わせて爆笑していたらレッスン室のドアが開き立ち尽くすニノがいた。
「何やってるんですか、おじさんふたりで」