第12章 抱擁
11月から始まるライブの為に何曲か振り付けすることになってるんだけど、なかなか進まなくてひとり早めにスタジオ入りした。
まだ誰もいないと思っていたのに到着すると音楽が聞こえてきて中を覗くと翔くんがひとりでレッスンをしていた。
仕事忙しいのにみんなより早く来て練習してるんだ、大変だな…
振りを覚えるのが苦手な翔くん、いつも家に帰ってから自主練してるんだよね。家に帰ってもゆっくり休むなんてこと出来ないんだ…ほんとに心配なんだよ?翔くんの体が壊れちゃうんじゃないかと思って…
でも俺にしてあげられることなんて声を掛けてあげることくらいしかなくて、それがもどかしい…何か君の為に出来ることがあればいいのに。
そんな事を考えながら踊る翔くんを見ていたら鏡越しに目が合った。振り返り笑顔で挨拶する翔くん。
「おはよう智くん」
音楽を止めて俺の方へと歩いて来た。
「早いんだね?振り付け考えに来たの?」
「うんそう、実際動いてみたかったから…翔くんも自主練頑張ってんだね、だいぶ踊ったでしょ?凄いよ汗」
手を伸ばし翔くんの首筋に流れる汗に触れた。首に触れた瞬間、翔くんがビクッと動いた。
「あ、あの…智くん、汚いから…」
顔をほんのりピンクに染めて慌てる翔くん。
「汚くなんかないよ、頑張ってる証拠でしょ?」
「そうだけど、わざわざ触る必要ないから」
「そっか、じゃあ拭いてあげる」
手に持っていたタオルで翔くんの汗を拭いてあげた。
「ありがと…」
少し照れたように微笑む翔くん、可愛いな…
「どういたしまして」
翔くんの役に立てたかな?