第11章 One Step
<ニノサイド>
岡田さんが翔さんをデート(?)のお誘いに来た。
恒例となったこのやり取り、ただいつもと違うのは岡田くんが引かないこと。今日はある目的の為絶対引かないんだよね…さてさて、どうなるか…
岡田くんのことを同志と言ってるだけあってさすがに断りきれなくなったみたいだ。『わかったよ』と答えた翔さん…あなたはどうでるかな?
「俺も行く!」
「え?智くん?」
翔さんはちょっと驚いたみたいだった。
「へ~?大野さんも行くんですか」
「まぁ、そうなるだろうね」
「なになにバトル勃発?」
「あいばか、余計な事言わない」
「は~い」
他のメンバーは楽しそうに成り行きを見ていた。
「いいよ、大野も一緒に行こう。山は気持ちいいよ~、大きな自然に囲まれると心も洗われるし、素直になれるから」
岡田くんが笑顔で答えると大野さんは拍子抜けしたようだった。
きっと断られると思ったんだろうな、『邪魔するんじゃねぇ』って。
だけどね、今回それが岡田くんの目的なんだよ。いつまでたっても関係性の変わらないあなたたちの為に焦れた岡田くんが動いてくれたんだ。
大野さんは知らない事実だけど、岡田くんは翔さんに既にフラれてる。いつものやり取りは岡田くんが翔さんに気を使わせない為にわざとやってるんだ。
「じゃあ、後で詳しいこと連絡するから」
そう言って楽屋を出ていった岡田くんの後を追った。
「岡田くん」
「お~、ニノ」
「すみませんね、ウチの年長組が手を煩わせて…」
「ははっ、いいよ…自分で好きでやってるんだから」
「ふたりの事、よろしくお願いしますね」
「おう!まかせとけ…じゃあな!」
岡田くんは手を振りながら歩いて行った。
ほんとに手の掛かるふたりなんだよなぁ。
誰が見ても両想いのふたり…不思議なくらいにお互いの思ってることがわかり合ってるのに、こと恋愛の事となるとわかっているのかいないのか…
翔さんに至っては『いいんだよ、俺と智くんはこれで』なんて全くもって動く気なし…
だから岡田くんは大野さんを挑発するようにわざと大野さんの前で翔さんを誘ったんだ。
いくらのんびり屋の大野さんでも危機感を感じるように人目の少ない登山にね。
これで乗ってくれなきゃ打つ手なしだったけど、よかったよ上手くいって。
後は大野さん次第だよ?