第10章 always
「はぁ~」
「どうしたんですか?大野さん」
ゲーム機から目をあげたニノが俺を見る。
「え、なにが…」
「いやいや、今盛大に溜め息つきましたけど?」
「あ、ごめん…」
「ふふっ、翔さんですか?」
「えっ?」
「溜め息の原因ですよ」
ニノが苦笑した。
「あ~まぁそうなのかなぁ」
「毎年の事ですけど年末の翔さんの忙しさ半端じゃないですもんね」
そうなんだよ…
あの日『これから時間はたっぷりある』なんて言ったけどさぁ…
時間はあってもふたりきりで会える時間は全く持てていない。
札幌最終日の夜も翔くんが『智くんの部屋に行っていい?』なんて可愛いおねだりしてくれたのに
酔っぱらった相葉ちゃんが部屋に乱入してきてふたりきりの甘~い時間を邪魔された。
しかも酔い潰れてそのまま寝てしまうという…
東京に戻ってきた途端、年末の特番の打ち合わせで翔くんの超多忙な日々が始まった。
分かってはいた…分かってはいたけどさぁ、ここまでとは…
あれから2週間、仕事以外で翔くんに会うことが出来ない。
5人での仕事の時もギリギリで来るし
終わったと同時に他の仕事に行ってしまう。
ふたりきりで会うどころか少しの触れあいも出来ないんだ…
今日は東京公演の前日リハだけどそれだって翔くんは後から合流…
「ニノ、ちょっといい?」
「はーい」
ニノがゲーム機をテーブルに置き松潤のところへ歩いていく。
松潤の隣に座るとふたりで肩を寄せあってパソコン画面を見てる。
ニノの肩に手を置く松潤…
なんだよ、ちょっと前まで『翔くん翔くん』言ってたくせに…
あの後ふたりの距離は確実に縮まっている…
付き合い出すのも時間の問題か?
はぁ~、それにしても見せつけてんじゃねぇよ…
せっかく気持ちが通っても
目の前に本人がいるのに触れられない事がこんなに辛いなんて…
「智くん?どうしたの?
そんな厳しい顔して」
頭の上から愛しい人の声がした。
「え?あ、翔くん」
「おはよう、遅くなってごめんね?」
「おはよ、お疲れさま」
「で、なにかあった?怖い顔してたけど」
「いや、何もないよ?」
翔くんに触れられないのが寂しいなんて言えないよな…