第2章 Kiss からはじめよう
智くんが二人の距離を詰めるように座り直す。
「…翔くん、抱き締めていい?」
「…いいよ」
智くんの腕が優しく俺を包み込む。
あたたかい。体だけじゃなく心もあたたかいもので満たされていく。
言葉なんて交わさなくても智くんの優しさが体に流れ込んでくる。
ずっとこの優しさに守られて来たのに当たり前すぎて気がつかなかった。
あの3人は知ってたんだね?
智くんが自分から言うとは思えない。
智くんの俺に対する態度を見てわかったんだ。
それくらい頑張ってくれてたのに、俺は気づきもせずあなたに甘えてた、と言うか甘やかされてた?
そっと抱きしめ返した。
「…ごめんね?俺まだまだ周りがみえてなかったね?」
「なんで?」
「だって、あの3人は知ってたんでしょ?智くんの気持ち」
「あ~、俺が翔くん狙いの連中追っ払ってるの見てたから」
智くんが苦笑いをした。
「えっ?そんなことしてたの?」
「…うん。…怒った?」
心配そうに聞いてくる。
「なんで?助かったとは思うけど」
「もしかしたら翔くんの好みの人がいたかもしれないじゃん…」
「それはないな」
「誰かも言ってないのにそんなことわかんないじゃん」
「ないよ。智くん以上に俺の好みの人なんかいないよ…」