第10章 always
翔くんはいつもと変わらずライブを盛り上げていった。
観てる人誰も気付かないんだろうな…翔くんが具合悪いなんて…
でも事情を知ってるメンバーは、其々に気を使い翔くんをフォローしている。
平気なふりしてたってメンバーはみんな分かってるんだ…本当は翔くんがしんどいこと。
でも本人が言わないから、さりげなくフォローしてるんだけど、その事も翔くんは分かってる。
「翔さん、なんとか持ちそうですね…」
着替えに戻ったステージ裏で、ニノが小声で話しかけてきた。
「…うん…」
「大野さん?何か気になりますか?」
「あ、ううん…」
正直、そろそろ限界だと思う…
メイクで顔色は誤魔化されてるけど、ちょっと表情が固くなるときがある。
ステージ上で倒れることだけは避けたい…じゃないとここまで頑張った意味がなくなってしまう。
最後のアンコールの時、気が抜けたんだろう…
翔くんの足から力が抜け、体が倒れそうになったところを、肩を組んでなんとかやり過ごした。
「もう少しだからね?頑張って」
小声で囁くと、翔くんは小さく頷いた。
珍しい俺と翔くんのスキンシップに、会場も盛り上がった。良かったバレなくて…
そのままステージから降りると、翔くんの体から完全に力が抜け翔くんは気を失った。
「翔さん!」
「ニノ騒ぐな。このまま控え室まで運ぶから、後のこと頼んだ」
「分かりました」
俺は翔くんを抱えあげると、急いで控え室に戻った。
ソファの上に寝かせ衣裳を弛めた。
汗を拭いて、おでこをタオルで冷やす。
翔くんのマネージャーが駆けつけてきた。
「大野さん。櫻井さんどうですか?」
「ほんとなら病院連れてった方が良いんだろうけど…」
でも翔くんはそれを望まないだろう…
翔くんの瞼がうっすらと開いた。
「翔くん?」
「……さ、としくん…ライブは?」
「ちゃんと最後まで終わったよ?」
「そっか…良かった…」
翔くんがホッとした顔をした。