第2章 Kiss からはじめよう
智くんが戻って来た気配がした。
起きなきゃと目を開こうとしたら、智くんが近づいてきて俺の頭をなで始めた。
この手…気持ちいいな…
目は覚めたけど、気持ちがいいからそのまま身を委ねた…
しばらくすると手が頬に移動する。
…あの時と同じだ…この指もあの時と同じ…
更に気配が近づき…
俺の唇にこの前よりも温度の高い唇が触れた…
この前よりも長い時間触れている唇。
…やっぱり智くんだったんだ…
頭の中では分かってた。
この繊細な指の持ち主。
近づいて来たときに匂ったあなた特有の優しい香り。
空間全体を包む心地よさ。
最初からあの人物はあなた以外にいなかったんだよ。
でも勘違いかもしれないとひとつずつ確めていったんだ。
暫くすると智くんが離れて行った。
ゆっくり瞼を開くと目の前には少し表情を固くした智くんがいた。
その顔を見てふふっと笑った。
「翔くん?」
「そんな顔しないでよ」
更に笑った。
「だって…気持ち悪くないの?」
不安そうな顔で聞く。
「なんで?」
「…男にキスされたんだよ?」
「今更?2回目なのに?」
「あの時起きてたの?
俺だって分かってた?」
智くんが驚いて聞いてきた。
「目は開かなかったけど意識はあった。
でもちゃんと確信したのは今」
「………」