第10章 always
翔くんは俯き加減で話し出した。
「ほんとはね、もう少しだと思ってた…
もう大丈夫かなって…
後は松潤自身が自分の力を認めさえすればって…
なのに、今回あいつ、弱音を吐いたんだ…
今までそんなことしたことないのに…
だから、あいつがひとりでライブ作らせて欲しいって言って来た時、自信取り戻させるためにいいよって言った…
でもひとりで潰れるなよって。頼れよって…そしたら、これからも支えて欲しいって言われて…
それ聞いたら、もう駄目だと思った。きっとこの先も、松潤には支えが必要だって…
こいつひとりに背負わせるわけいかないって…」
「翔くんの言ってることは分かる。
でも、あいつはそんなに弱いかな?」
「智くん?」
翔くんは顔をあげ俺を見た。
「確かに、ライブを作り上げるのは大変な作業だよ?
だけど、あいつは今までそれをこなしてきた実績があるんだ…
そんなに簡単に折れる心じゃないと思うよ?」
「じゃあなんで、個人的に支えて欲しいなんて…」
「おそらく気づいたんだ…
俺と翔くんの関係に…
だからどんな手を使ってでも、翔くんを手に入れようとしてる。
『ライブ演出の為に』なんて嵐の一番大切な物を餌にして」
翔くんは驚いたようだったけど、少し考え…
「どちらにしても答えは一緒だよ…
あいつをそこまで追い込んだのは俺だ…」
「どうして翔くんがそこまでしてやらなきゃいけないんだよ…」
「…さっきも言ったでしょ?嵐の為だよ…
嵐が壊れないように、綺麗な五角形を作る為に、あいつが俺を望むなら、それに応えてやらないと…
俺が智くんを選んだら、あいつは崩れるよ…」
「…翔くん。翔くんはそれでいいの?」
「…いいよ。じゃなきゃ、なんの為に今まで頑張って来たのか分からない…
ごめんね…智くん。自分勝手なことばかり言って…」
そう言った翔くんの瞳から、涙が一筋縄溢れた…
俺ばかりじゃない…本当は翔くんも辛いんだ。
そっと翔くんを抱きしめた。
「翔くんの気持ちは分かったよ…
翔くん、俺こそごめんね…嵐の為に、もう翔くんを引き留めない…」
ふたりが結ばれなかったのは、翔くんだけの責任じゃない…俺もそれを認めたんだ…
嵐の為に、俺は翔くんを手離すんだ…
だから、翔くんひとりで全てを背負わないで…