第10章 always
翌日、本番前のリハの合間に、何か考え込んでる翔くんの姿を見つけた。
「翔くん、何かあった?
今日あんまり集中出来てないよね?」
ステージの端の方で、ひとりで座り込んでる翔くんに後ろから声を掛けると、ビクッとした様子で振り返った。
「あ…ごめん、智くん…」
「珍しいね?翔くんがボーッとしてるなんて…」
「…ちょっと疲れたのかな…」
少し俯いて、そう言う翔くんの表情が悲しそうで…
「松潤と何かあったの?」
ゆっくりと横に首を振る翔くん。
「何もないよ…」
「夕べ松潤が部屋に行ったでしょ?なに言われたの?」
翔くんは俺の方を見ようともせず
「……智くん…今までのことなかったことにして…」
震える声でそう呟いた。
「やっぱり、松潤に何か言われたんだね?
翔くん、ちゃんと話してくれる?」
「…智くん」
やっと顔をあげてくれた翔くんは、今にも泣き出しそうで…
「今日のライブが終わったら、話しよ?」
「…うん」
「気持ち切り替えられる?
ライブ見に来るファンの人たちに、そんな顔見せちゃ駄目だよ?」
「うん…ごめんね、心配かけて…」
「ううん…俺にだったらいくらでも心配かけていいよ?でもね、分かってると思うけど、ライブ見に来る人はその1回を楽しみにしてくるんだから、最高の翔くんを見せてあげて?」
「…分かった」
「ライブ、頑張ろうね…」
床に置かれた翔くんの手を、周りに気付かれないようにそっと握った。
「うん…」