第10章 always
〈智サイド〉
明日、札幌公演の初日を迎える。
前日リハが終わり、部屋に戻る時、ニノに『少し部屋で飲まないか』と誘われた。
飲みは口実で、何か話したい事があるんだろうと思った。
松潤の様子がおかしくなってから、ニノの視線が常に松潤に向いてる…
よっぽど気になってるんだろうけど、翔くんにお願いされてしまったから、何も言うことが出来ないんだろう。
ツアーも順調に進んでるし、ライブに関しては文句のつけようもない…
だけど何かがおかしい…あのふたりが一緒にいるだけで、何かが崩れて来ているような…
ドアを軽く叩く音がして『大野さん開けて』とニノの声が聞こえた。
ドアを開けると、両手にビニールの袋を下げたニノが立っていた。
「何それ?」
「酒とつまみ」
「そんなに?」
「後から相葉さんも来るって。だから相葉さんのお菓子も預かってきた」
俺にひとつビニール袋を渡し、部屋の中へ入っていくニノ。
テーブルの上に缶ビールとつまみを出し、ソファーに座った。
「大野さんも早く座って、飲みましょうよ」
「なんでお前が仕切ってんだよ…ここ俺の部屋だぞ」
「そんな細かいこと言ってないで、ほらカンパ~イ」
そう言うと、ひとりで飲み始めたニノ。
「お前なぁ~」
「だって、飲まなきゃやってられないでしょ?」
「何が」
「大野さんだって苦しいんじゃないの?」
ニノ知ってるのか?俺が翔くんのこと好きなこと…
それに『大野さんだって苦しい』って事は、お前も苦しんでるのか?
それは何に対して?