第10章 always
翔くんは俺から視線を逸らし何も答えない。
そりゃそうだよな…別に好きな人がいるのに簡単に答えられる訳がない。
でも断ることもできないんだろ?
今の俺は、翔くんに頼りきった、守ってやるべき人間だもんな。
メンバーを大切にしてる翔くんが、切り離せるわけないんだ。
「…翔くん…駄目、かな…」
弱々しい声色で、涙で潤んだ瞳で見詰めれば、翔くんは駄目なんて言えないんだ。
翔くんのことずっと見てきたんだから、そんなことくらい分かるよ?
「…翔くん。俺、ずっと翔くんを目標にして頑張って来たんだ…翔くんに追い付きたくて…
でもなかなか追い付けなくて、焦ったり悩んだりした。
今回分かったんだ…翔くんを目標にするよりも、翔くんに支えて貰った方が頑張れるってことが…
翔くん…俺、翔くんが好きだ。
付き合って欲しい。俺だけの翔くんになって?
これからもいい仕事をするために、俺の側にいてよ…」
涙ながらにそう訴えると、翔くんは俺のことをじっと見て…
「…少し時間くれる?今すぐには、返事出来ない…」
「わかった…札幌の最終日の夜には返事くれるかな?
翔くんを誰にも渡したくないんだ。
俺だけを見ていて欲しい…翔くんが誰かの物になったらって考えると怖くて…急がせてごめん」
翔くんは悲しそうな顔をして
「俺こそごめんな?お前の気持ち、ちゃんと分かってなかった…
お前の頑張りに甘えてたんだな…」
確かにしんどい時もあったよ。でも翔くんに近づけるんだと思えば、いくらでも乗り越えられた。
それもこれも、翔くんを手に入れる為の試練だと思えばどうってこと無かったんだ。
なのにあの人のせいで…俺の今までの頑張りはなんの意味もなくなった。