第10章 always
「なんでいつになるか分からないの?
翔くんは何を待っているの?」
翔くんは顔を伏せたまま話し出した。
「…まだあいつが…今はまだあいつをひとりにできない…」
それを聞いて分かったよ…翔くんが俺の気持ちに応えられないのは松潤のことを気にしてるんだね?
翔くんは分かってるんだ松潤が翔くんの事を好きだって事…
だからいつになるか分からないんだ…
「翔くん、分かった…でもだったら俺待つよ」
翔くんが勢いよく顔をあげた。
「なんでっ?!」
「だって待たなくていいって言うのは俺にだけでしょ?
他の人だったらすぐ断るんだよね?」
そう言ったら驚いた顔をした。
「翔くんが『待たなくていい』って言ってくれてる間は待つから」
「智くん…ごめん…」
「謝らないで…俺翔くんの事諦めなくていいんだもん、それが分かっただけでも良かった…」
翔くんの瞳から涙が溢れた。
「…俺も良かった…智くんが諦めないでいてくれて…」
床に置かれた翔くんの手をそっと握ったら翔くんが俺の顔を見てはにかんだ。
翔くんが誰かの物にならないのならいつまででも待つから…
「さてと、そろそろ始めよっか…」
翔くんと手を繋いだまま立ち上がり翔くんの方を向いて勢いよく引っ張りあげると翔くんが俺の胸に飛び込んできた…背中に腕を回し抱きしめる。
「これくらいはいいよね?」
そう耳元で囁くと翔くんは小さく頷き俺の背中にそっと手を回してくれた。俺の肩に頭を乗せ体重を預けてくれる翔くんが愛しくて回した腕に力を込めた。
その時、バタンと扉が閉まる音が聞こえて、慌ててふたりとも体を離したんだけど誰もいなくて…
「気のせい?」
「…かな」
でも、やっぱり気のせいじゃなかったんだ…