第9章 言葉より大切なもの

〈智サイド〉

キスの後、2度目に翔くんの体を撫でたら腕を掴まれた。

翔くんを見ると瞳に不安の影を宿してて…

そうだよな…ただでさえ今日認識した同性への恋心。

何年も男相手に恋心を抱いていた俺と違って、男同士のその先を想像した事なんてないんだ…

安心させたくて『もうしないよ』と伝え頭を撫でた。

体が触れあうのも怖いかなと思って、距離を取っていたのに抱きついてきた翔くん…

しかも俺にも『強く抱け』なんて言う。

可愛くて思わず笑ってしまったら、キスをされた…

そんなの反則でしょ？

愛しすぎるこの人を、愛情を込めて抱きしめた。

この気持ちは、どう表現すれば翔くんに伝わるんだろう。

ずっと好きで好きで大好きで…

『好き』って言葉じゃ、もう言い表せない…

腕の中にいる何よりも大切な人に、少しでも俺の気持ちを伝えたくてぎゅっと抱きしめ

「翔くん…愛してる…」

って囁いた。

腕の中の翔くんがゆっくりと俺の顔を見た。

翔くんの顔は真っ赤に染まってて

「…ありがと」

そう言って微笑む翔くんの瞳には、今にも溢れそうな涙が溜まってる。

そっと触れるだけのキスをすると翔くんは瞳から一筋の涙を溢しながらキスを返してくれた。

ふたりの視線が絡まり合い、どちらともなく再び激しく重なりあう唇…

キスの合間に「愛してる」と囁くと翔くんも恥ずかしそうに「…俺も」と呟いた。

再び翔くんを強く抱きしめた。

ずっとこうしていられたらいいのに…そうは思っても明日は仕事で

「翔くん、そろそろ休もうか…」

潤んだ瞳で寂しそうに俺を見る。

「お風呂入っておいで、そしたら一緒に寝よう？」

そう言ってあげると、嬉しそうに微笑んだ。