第9章 言葉より大切なもの
〈翔サイド〉
智くんが幸せだと言ってくれた。
その言葉で俺も更に幸せになった…
ふたりでいれば幸せって倍増するんだね。
いつまでもこうしていたい…明日仕事なのは分かってる…でも…
智くんにぎゅっと抱きついた…
「…帰りたくないな…」
「翔くん?」
智くんの戸惑った声…こんな我が儘ばっかり言ってたら嫌われちゃうよね…
「嘘だよ、明日仕事だもんね」
笑って智くんから離れた。
「ごめんね、遅くまで…」
そう言って立ち上がったら智くんに腕を掴まれた。
「もう遅いんだから泊まっていきなよ」
智くんが優しく微笑んでくれた。
「でも…迷惑でしょ?」
「なんで迷惑?翔くんと一緒にいられるのに迷惑な訳ないじゃん、逆に嬉しいけど?」
「…ほんとにいいの?」
「いいよ、ほらおいで…」
そう言って両手を広げてくれる智くんの隣に座りそっと抱きついた…
「ふふっ、翔くん、小さな子供みたい…」
「…どこが…」
「抱きつき方がお母さんに抱きつく子供みたいで可愛い…」
「え~、じゃあ智くんがお母さん?」
「ん~、それは嫌かも…
翔くんとはやっぱり恋人でいたいな」
智くんの口から出た『恋人』と言う言葉が恥ずかしくて顔が熱くなって俯いた…
智くんの顔が覗き込むように近づいてきて…
智くんの唇がそっと俺の唇に触れた…
「お母さんじゃこんな事出来ないもんね…」