第9章 言葉より大切なもの
〈智サイド〉
目の前の翔くんが静かに涙を溢した…
「智くん、ごめん…」
翔くんが俺の目をしっかりと見て呟いた。
翔くんの涙を拭ってあげたいけど、俺が触れちゃ駄目なんだ…
「翔くんが泣く必要はないんだよ…辛い思いさせてごめんね」
翔くんは首を横に振った…
「…辛い思いさせたのは俺だよね
智くんの気持ちに気づかないで…ずっと甘やかされてきたのに…
智くんに与えて貰ってばかりで…
それなのに俺、簡単に答え出して…」
翔くんの涙は次から次へと流れて止まらない…
そんな姿を見ていられなくて、翔くんの隣に座って抱きしめてしまった。
「ごめんね…最後だから…
仕事以外で、もう翔くんに触れることしないから」
翔くんの腕が俺の背中に回り、そっと俺を抱きしめた…
俺の腕の中で翔くんが小さく首を振って…
「最後にしないで…これからもずっとこうして触れていて欲しい…」
「翔くん?」
「ごめんね、我が儘ばっかり言って…
俺、やっぱり智くんがいないと、駄目なんだ…」
それってどういう意味?
触れる事は許すけどメンバーとして側にいろって事?
翔くんが顔をあげて俺の事を見つめた…
「…智くん、俺も智くんの事…好きだよ」