第9章 言葉より大切なもの
〈翔サイド〉
智くんとの電話を切り、ニノと松潤に再度お礼を言ってニノのマンションを後にした。
タクシーを拾い、智くんのマンションに着くまで、何をどうやって伝えようか考えていたけど、全然考えが纏まらない…
今まで好きでいてくれたお礼と、今まで好きだったのに気がつかなかったお詫びと…
あと何を伝えればいい?
道路が空いていたせいで、あっという間に智くんのマンションに着いてしまった。
智くんの部屋の番号を押すと、智くんの声が聞こえてきた。
一瞬にして緊張感が高まる…
部屋に通されてからも、心臓の音が大きくなっていくばかりで、静かな部屋に響いて智くんに聞こえてしまうんじゃないかと思った。
智くんがコーヒーを淹れて来てくれたけど、今手にしたらカップが震えてしまいそうで、持つことが出来なかった。
智くんが正面に座り、俺の言葉を待ってくれてる…
話したいことは山程あるんだけど、何から話せばいい?
「…あのね、智くん…」
言葉の続かない俺を見て、智くんは微笑んで
「翔くん、何を言われても俺は大丈夫だから…
昨日から言ってるでしょ?
翔くんが無理する必要は無いんだよ?
俺が勝手に翔くんを好きになっただけなんだから…」
なんでこの人は、こんなに自分のことよりも俺のことを考えてくれるんだろう…
俺はそんな価値のある人間じゃない…
智くんにこんなに大切にして貰う資格なんて、ないんだよ…