第9章 言葉より大切なもの
翔くんが来るまで気持ちを落ち着かせないと…
どんなことを言われても動揺しないように、シミュレーションしておこう。
やっぱり嫌い?近づかないで?キモい?
思い付く限りの最悪の答えを思い浮かべてた。
部屋にインターフォンの音が鳴り響く…
ゆっくり来てくれればいいのに、翔くんの到着は想像より早かった。
道路が空いてたのか…
「はい」
『智くん…俺』
モニターに映る翔くんは俯いてて表情が見えない。
「今、開けるね」
自動ドアのロックを解除して、翔くんを迎えるために玄関に向かった。
再びインターフォンが鳴り玄関のドアを開けた…
「いらっしゃい」
笑顔で翔くんを迎え入れた。
「…ごめんね、こんな時間に」
視線を合わせてくれるけど、やっぱりいつもの翔くんじゃない…
「大丈夫だよ。上がって」
「お邪魔します…」
俺の後について歩いてくる。
「適当に座ってて。飲み物コーヒーでいいかな?」
「あ、うん、何でも大丈夫…」
キッチンに行き、コーヒーを淹れてリビングに戻るとソファーに座って俯いてる翔くん…
膝の上で両手を組んでて緊張してるみたいだ。
「はい、どうぞ」
翔くんの前にマグカップを置き、翔くんの向かい側に座った。
「ありがとう」
翔くんは顔をあげてお礼を言った。