第9章 言葉より大切なもの
〈智サイド〉
家に帰ってひとりになるとやはり考えるのは翔くんの事…
松潤は避けてるわけじゃないと思うって言ってくれたけど、あんだけはっきりと視線をそらされたらなぁ…
色んな事を洗い流したくて風呂に入ったけどそんな事で流れてくれる訳がない…
ビール片手に考える事はイヤでも翔くんの事。
今日は早目に寝てしまおうとベッドに向かおうとした時、手に持っていた携帯が鳴り出した。
画面を見れば翔くんの名前…
一瞬緊張したけどいつも通りにしないと翔くんに気を使わせてしまう…
「もしもし、翔くん?」
大丈夫、心臓はドキドキしてるけど声は冷静さを保った。
『…智くん、ちょっと話があるんだけど…』
電話の向こうから聞こえる翔くんの声は緊張してて、だから出来るだけ優しい声で問いかけた。
「ん、なに?」
『直接会って話がしたい…
これから智くん家行ってもいい?』
急ぎで話したいこと…
やっぱり無理でした、かな…
そんな急いで答え出さなくてもいいのに…
ずっと考えてくれててよかったのに…
真面目な翔くんは一所懸命考えちゃったんだろうな。
だったら聞いてあげないと…
早く翔くんを楽にしてあげたい。
「うんいいよ、待ってるから…」