第9章 言葉より大切なもの
翔くんが泣きそうな顔をしてる…
俺が翔くんを嫌う?そんなことあるわけないじゃん。
それが出来れば苦労しないんだって…
翔くんの為に距離をとってあげようとしたのに、かえって翔くんを悲しませてしまったみたいだ。
「翔くん、俺が翔くんのこと嫌うわけないでしょ?」
そう言うと翔くんは顔を上げた。
「じゃあなんで目を合わせてくれないの…」
そんな潤んだ瞳で見ないでよ…俺が苛めたみたいで心が痛む。
「翔くんが嫌かなと思ったから…
普通さ気持ち悪いじゃん、同性から告白されるなんて…
でも、翔くん優しいからそんなこと言わないし、態度にも出さないでしょ
だから俺から離れてあげないと駄目だと思った…」
翔くんが首を横に振る。
「嫌じゃないよ
昨日確かに智くんの気持ちに応えられないって言ったけど、告白されたのは嫌じゃなかった…
だから虫のいい話かも知れないけど、智くんには今まで通りにしていて欲しい…
駄目かな…俺の言ってること…狡い?」
翔くんがすがるような目で俺を見る。
良かった…翔くんに嫌われてなかった。
それどころか今まで通りにして欲しいと頼まれた。
「今まで通り近くにいていいの?
翔くんがそう望んでくれるなら、俺は全然構わないよ?
でもね、ひとつだけ分かっていて欲しい…
翔くんには昨日の事忘れてって言ったけど、俺はこれからも翔くんのこと好きだよ?
そんな俺が近くにいて大丈夫?」