第9章 言葉より大切なもの
〈智サイド〉
翔くんが雑誌を手に取り数ページ捲って手を止めた。
ずっと同じページを見てるから気になって横から覗き込んだ。
翔くんとふたりで抱き合ってる写真…
「懐かしいなぁ…」
思わず声に出してた…この写真撮るとき超ドキドキしてたんだ。
この頃から俺は翔くんに恋心を抱いてた。
カメラマンさんに『抱き合って』の指示を出された時、嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちが合わさって動きがとれなくなった…
そしたら翔くんが笑顔で抱きついて来てくれて…当時は天にも昇る気持ちだった。
そんなことを思い出していたら翔くんに特別な何かあったのかと尋ねられてしまった。
俺にとっては特別な写真だけど、翔くんに言えるわけがない。
俺は誤魔化す為に別の雑誌を取って捲り始めた。
そしたら翔くんの「なんで?」って声が聞こえて来たんだけど、その声が震えてて…
翔くんを見ると悲しげな顔をして、今にも泣き出しそうに瞳が潤んでる。
どうして?なんで翔くんはそんな表情をしているの?
俺、何かした?
「翔くん?」
声を掛けると翔くんは少し安心したように力を抜いた。
「やっと見てくれた…智くん今日一度も俺の事見てくれないから…
俺の事、嫌いになった?
嫌われてもしょうがないんだけど…」
そう言って俯いてしまった翔くん。