第9章 言葉より大切なもの
着替えとメイクを済ませスタッフに呼ばれる。
「今日は本誌の20周年記念特集でおふたりには過去の記事を見ていただき思い出をフリートークで語って頂きますね」
テーブルの上には数冊の古い雑誌が並んでる。
「全部おふたりの回の物を用意してますので自由に見ててください
今、撮影の準備しちゃいますね」
スタッフさんがその場を離れた。
中の一冊を手に取りペラペラっと捲った。
1枚の写真に目が止まった…10年以上前に撮った写真。
笑顔で智くんと抱き合ってる…
今ではあまり取らないポーズだな。
そのページから動かずにいたら智くんが覗き込んできて
「…懐かしいなぁ、その写真…」
「え、覚えてるの?これ」
「あ、うん…まぁ」
智くんが雑誌から目をそらした。
「なにか特別な事あったっけ?」
「いや…ないよ」
「じゃあなんでこの写真のこと覚えてた?」
智くんは答えてはくれず別の雑誌を手に取り捲り始めた。
そんな智くんの態度が悲しくなってもう一度声を掛けた。
「…なんで?」
声が震えた…
俺、なんか泣きそう…
「翔くん?」
いつもと違う声に智くんも気づいたみたいで智くんが俺の事を見た。
今日、やっと俺の事見てくれた…やっと目が合った。
たったそれだけの事なのに…ほっとした。