第8章 とまどいながら
食事を終えて智くんの部屋に向かう。
今まで知らなかった智くんの事を少しずつ知っていくのが嬉しくて、自然に笑顔になってしまう。
「さぁ、どうぞ」
玄関のドアを開けて招き入れてくれた。
「お邪魔します…」
智くんのプライベート空間に入る緊張で動きがぎこちなくなる。
「そんな緊張しないでよ、俺まで緊張しちゃうじゃん」
「だって初めて入る家なんだよ、緊張するでしょ」
「お化け屋敷とかじゃないし、普通の家だから
ほら、おいで」
智くんが俺の手を握って歩き出した。
「ここ座ってて、コーヒー入れてくる」
ソファーに座らされた。
智くんらしい部屋…キョロキョロと部屋を見回してると智くんがマグカップを両手に持って戻ってきた。
「はいどうぞ、眠れなくなっちゃうからカフェオレにしといた」
「ありがと」
手を伸ばして受け取った。
一口飲むと甘くてホッとする味…
「美味しい…」
「良かった」
智くんもカップに口をつけた。
「うん、おいし」
「でしょ?」
「なんか翔くんが入れたみたいな言い方」
「ははっ、どや顔してた?」
「してたしてた」
智くんが笑うから俺も一緒に笑った。
「智くんって家に帰ってからなにしてんの?
全然想像つかないんだけど
テレビもあんまり見ないんでしょ」
「ん~、なにしてんだろ…
絵描いたりはしてるけど」
「自分で何してるか分からないの?」
「ボーッとしてんのかな」
「ずっと?」
「ずっとボーッとしてて気がつくと翔くんのこと考えてた
ちょっとヤバイ奴でしょ?」
智くんは苦笑いするけど、嬉しいと思ってしまう俺もちょっとヤバイ奴なのかも…