第8章 とまどいながら
<翔サイド>
「俺も帰るかな
ライブ構成少し進めたいし」
「悪いな、帰ってまで仕事させて」
智くんが申し訳なさそうに言う。
ほんとに松潤はライブの準備が始まると休む暇がない。
「手伝えることあったら言えよ」
「ありがと、翔くん。でもまだ大丈夫その内頼むと思うけど
じゃあ、お疲れ~」
「お疲れ」
楽屋にふたりきりになった…
「翔くん、この後予定は?」
「なにも無いよ」
「じゃあ、メシ食いに行こ」
「うん、いいけど、どこ行く?」
「家の近くにいつも行く和食やがあんだけど、そこどう?」
「へー、智くんがいつも行くお店なんてあるんだ
行ってみたい」
「んじゃ、行くか」
「あ、俺今日車なんだ」
「だったら家の駐車場に停めて歩いてこ
ちょっと距離あるけどいつも俺歩いて行ってるし」
「分かった」
初めて行く智くんのマンション。
駐車場だけど智くんの住んでる所を知れるのが嬉しい。
智くんを助手席に乗せて運転する。
「案内よろしくね」
「おぅ!運転よろしくね」
「うん」
ふたり顔を見合わせて笑った。
智くんの案内でマンションに到着し、車を停めて店に向かった。
ふたり肩を並べて歩く…もちろん手なんて繋げないけど自然にいつもより距離が近くなるのが嬉しい。
お店も智くんが選びそうな落ち着いた雰囲気…
「ここなんでも旨いからどれ頼んでも大丈夫だよ」
「へー、あっ、貝の刺身もある、食べたいなぁ」
「ほんと好きだよね貝」
「うん、大好き、あーでも刺身食べたらお酒飲みたくなっちゃうなぁ」
「飲めばいいじゃん」
「ん~、でも車だし」
「家泊まっていけば?明日一緒の仕事だし」
『泊まっていけば』の一言にすぐに返事を返せない…
凄く軽く言われたから智くんとしては何も考えてないと思うんだけど、この前から意識してる俺としては無意識に構えてしまった。
そんな俺を察したのか
「ははっ、大丈夫だよ、何もしないから」
微笑んでくれた。
「あ、じゃあ、お邪魔します」