第8章 とまどいながら
暫くの間、真面目な顔をして俺のことをじっと見ていた智くん。
俺が何も反応しないせいか『ふふっ』って笑って
「冗談だよ
ニノに翔くん貰う許可取らないと…
またあいつ怒らせると怖いから」
突然言われてびっくりしたけど、智くんとキスするのが嫌な訳じゃない…
ずっとずっと好きだったんだから、そんなふうに言って貰えてむしろ嬉しいんだけど…
はっきりと言われて恥ずかしいのとどう答えたら良かったのか分からなくて固まってしまった。
長い間ひとりでいたし、ましてや男同士の付き合いなんてしたこともなくて…
でもこれから先、そういうことも含めの『お付き合い』って思ってくれてるって事だよね?
沈黙を破るように智くんが立ち上がった。
「そろそろ帰ろうか」
振り返って手を伸ばしてくれるからその手を掴んで引っ張った。
「おわっ⁉」
智くんがバランスを崩して倒れてきたからその体を支えて智くんの唇に一瞬触れるだけのキスをした…
ゆっくりと体を起こした智くんは驚いた顔をしてた。
「え?なんで?」
「…したかったから
俺からすればニノの許可要らないでしょ?」
顔が熱くなるのが分かった。
「もぉ~、折角我慢したのに」
そういうと智くんはもう一度隣に座って俺のことを抱きしめた。
「俺、明日ニノに怒られる。だから俺からキスしていい?」
智くんの肩に顔を埋めたまま頷いた。