第8章 とまどいながら
「今まで俺の気持ちが翔くんにバレたら翔くんのこと困らせるし、場合によっては嵐が壊れるんじゃないかって思ってて…
だから言えなかった…」
智くんも俺と同じなの?
「でも翔くんを誰にも渡したくなくて翔くんのことを好きで近づこうとする人がいると邪魔してた…
陰でそんなこと続けるくらいなら例え振られてもちゃんと気持ち伝えなくちゃいけなかったんだ
今回みたいに俺の嫉妬心が暴走する前に…」
智くんが苦笑する…
「智くん、もういいよ…智くんの気持ち分かったから、もうやめよ」
話をする智くんが苦しそうで話を遮った。
重ね合わせていた手が智の手によって口許へ引き寄せられた。
「…翔くん、ごめん…」
智くんの吐く息が震えているのを掌で感じる…
「…好きになって…ごめん…」
智くんの瞳から一筋の涙が溢れた。
「違う!違うよ、智くん」
俺は首を横に振った。
「智くんだけが悪いんじゃない
俺も智くんと同じだから…
ちゃんと勇気を出して智くんに好きだって言ってれば智くんの事苦しめなくて済んだのに…」
「翔くん?」
「…ごめん、智くん、俺も智くんがずっと前から好きだったのに怖くて言えなかった…」
自分のせいで智くんを苦しめていたんだ…
智くんに暗い顔をさせていたのは俺だった…
何も分かってなかった自分が情けなくて涙が出る。
「だからもう、謝らないで…」
智くんの頬に触れていた手が膝の上に下ろされそのまま智くんにぎゅっと握られた。
泣き顔を見られたくなくて俯くと智くんのもう片方の手が俺の頬に触れ、涙を拭った。