第8章 とまどいながら
「え?あ、キスマークと言えばキスマークだけど…」
翔さんが言い淀んでいると
「そんなのつけて仕事場来てんなよ
今日、撮影なのわかってんだろ?自覚無さすぎじゃね?」
俺の後ろから今まで聞いたことのない冷たい声が聞こえた。
振り返ると大野さんが無表情のままじっと翔さんを見てた。
「大野さん、そんな言い方しなくても…」
大野さんの気持ちを考えるとショックなのは分かる。
でも俺以外は大野さんが翔さんを好きなのを知らないんだ。
それなのにそんな言い方したら…
「…ごめ、ん…」
翔さんの震えた小さい声が聞こえて翔さんを見ると、翔さんの瞳から涙が零れてた。
「翔さん?」
「ちょっとトイレ行ってくる」
翔さんが部屋を飛び出した。
「翔さん!」
俺は慌てて翔さんを追いかけた。
後ろでは相葉さんの声が聞こえた。
「大ちゃん、ごめん!俺が悪いんだ」
その言葉を聞きながら部屋を出た。
確かに大野さんの言い方はキツいし冷たかった。
でも、それくらいで大の大人が泣くか?
翔さん、もしかしてあなた大野さんのこと…
もしそうなら、俺と大野さんの仲を怪しんだ潤くんの言葉をどんな気持ちで聞いてたの?
それにあの大野さんの冷たい態度と投げ捨てたような言葉…
どれだけ翔さんを傷つけてしまったんだろう…